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屋根・雨漏りの調査員のブログ

屋根・雨漏りの調査員、神谷昭範です。仕事であり、趣味である屋根・雨漏り調査などからリフォーム・メンテナンスに関するお役立ち情報を誠実にわかりやすく書いています。

建築学会での発表内容です。けらば部の雨水浸入の機構を検討しました!!

こんにちは~。

屋根・雨漏りの調査員、神谷昭範です。

 

昨日、私が日本建築学会大会で発表した内容をご紹介いたします。

 

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化粧スレート、アスファルトシングル、金属屋根などの平板系屋根葺き材けらば部からの雨水浸入のメカニズムを検討しました。

 

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その1で、一般的な風雨条件(年間20~30日以上発生)において、相当量の雨水が屋根材からけらば水切り内へ浸入していることを送風散水試験で確認しました。

築年が経過した平板系屋根のけらば部を調査すると、写真のように繊維質が混入した土埃が堆積しています。(数多くの物件で発生しています。)

上の写真は築15年・都内の現場です。

けらば部を剥がしてみると野地合板がけらば部のみ劣化していました。

けらば部の劣化は水切りの土埃の堆積が要因です。

 

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けらば部からの雨水浸入が野地劣化を引き起こす流れです。

①けらば部捨て水切りへの雨水が浸入

②けらば部捨て水切りからの雨水のオーバーフローが発生

③オーバーフロー水がスレートの緊結釘孔からルーフィングを通過して、野地合板へ浸水

④野地合板の高含水の持続により、野地合板劣化

 

オーバーフローする要因として、

★けらば部捨て水切りへの浸水量

★土埃堆積量

★土埃堆積箇所数

★ルーフィング上での土埃堆積の有無

が考えられるため、実験により関係性を明確にしました。

 

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試験体の屋根勾配は3寸、水切りは市販の化粧スレート用を使用した。

 

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注水試験の概略です。

模擬土埃はパテ2㎜とスポンジ8㎜としました。

スポンジを採用することで、スポンジ内を通過する水とオーバーフローする水の両方を表現できました。

注水は直接捨て水切り内に行いました。

捨て水切りを流れた水を計量し、注水総量から引くことでオーバーフロー水量を求めました。

 

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実験条件としては、その1で求めた結果から注水量は1分間に100ml/min~2,000ml/minで変化させました。

堆積量は、A.なし B.隅切全面 C.隅切2/3 D.隅切1/3で変化させました。

堆積箇所数は1~3カ所で行いました。

ルーフィング上のスレート尻部土埃は有無で比較しました。

 

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実験結果です。

1)土埃堆積が無い場合、大量の雨水が捨て水切りに浸入した条件である注水量2,000ml/minでオーバーフローしました。逆に、通常の雨では土埃が無ければオーバーフローしません。

2)土埃堆積量が隅切全面の場合、注水量100ml/minまでオーバーフローしません。つまり、小雨ではオーバーフローはしません。

注水量が100ml/minを超えるとオーバーフローします。

この条件は、時間当たり雨量10㎜、けらば流れ長さ3m以上です。

時間当たり雨量10㎜以上は年間20~30日以上発生しますので、頻繁にオーバーフローしていることになります。

注水量が増加するにつれ、オーバーフロー水量も増加する傾向でした。

3)土埃堆積量は隅切2/3までは、大量の雨水が浸入しなければオーバーフローしません。

土埃堆積量が増加することがオーバーフローの条件であることがわかりました。

 

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4)土埃堆積箇所数が増加するに連れて、オーバーフロー水量も増加しました。

3箇所では、注水総量の9割がオーバーフローしました。

片流れ屋根のような流れ長さが長い屋根では、オーバーフローが大量に発生することがわかりました。

 

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5)ルーフィング上に堆積した土埃の影響について調べました。

1か所のスレート尻部にわずか3gのパテを設置しました。

オーバーフロー水はスレート尻部で横走りしました。

青⇒に沿って、雨水が流れることがわかりました。

けらば部から910㎜離れた軒先から雨水が流れ出すことがわかりました。

実験では1か所の尻部での土埃を想定しましたが、実際の屋根では何カ所も尻部に堆積しているので、さらにけらば部から離れた屋根の中心部まで横走りします。

現状、けらばの増し張りが500㎜となっていますが、効果が限定的と言えます。

また、ビス孔からの滴下も観察されました。

スレートの尻部に沿って雨水は横走りします。

その位置にスレートを留め付ける釘があるため、雨水経路に釘孔があり、実際にルーフィング内に滴下することが確認できました。

 

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まとめとして、平板系屋根葺き材のけらば部捨て水切りにおいて、土埃堆積が進行すると一般的な風雨条件においても浸入雨水が広範囲にわたって野地合板にオーバーフローが生じ得ることがわかりました。

 

この実験は、国土技術政策総合研究所が主催した5年間の共同研究において、石川名誉教授にご指導いただきながら実施した実験です。

送風散水試験もつくばの(独)建築研究所において実施しました。

各屋根業界団体にもご協力いただきました。

この実験が少しでも現状の平板系屋根葺き材けらば部の不具合の改善、長寿命化につながればと思います。